2-26 自身の略地図を作る

かつて香川幹一氏は,『略地図の書き方』という昭和32年初版発行の著書(古今書院)の中で,世界や大陸の輪郭を要約し,それに様々な情報を簡潔に盛り込み,土地の特性をつかむことが,地理学習において重要なのだと説いた。ようするに世界地図や大陸図の簡単な略図を描けるようにするということは,地域理解の第一歩ということなのだろう。正しい略地図を,自身のメンタルマップにできたものが,正しく世界を理解できるということである。
香川氏の描いた略地図は,もちろん現在でも地理教育の中で十分使えるものだと考える。正直いって近年の教科書にもようやくのるようになつた略地図は,この香川氏の地図とほぼ似たようなものが多い。
ただ香川氏の略地図を実際の授業で「お手本」として活用していく場合,細かいところで,自分だったらもう少し東南アジアは詳しくかくだろう。とか,自分だったら南米のアマゾンの河口付近にくびれを書くだろうという,違和感をもつ地理屋もいるはずである。それは地理屋ひとりひとりの世界観が違うので私はそれは当然だと思う。したがって,私も略地図の書き方を授業でかならずやっているが,そこで使っている地図は,香川氏の略地図に多少修正を加えたものである。
この修正作業は非常に簡単である。つまりマズスキャナーで香川氏の略地図をスキャンする。そしてそのスキャンして作ったファイルをIllustratorで開く。そしてそれを下絵にして,まず単純に略地図をトレースしていく。さらにそのトレース後,自分のこだわり部分の修正を加える。そして最後にIllustratorの中の「フィルタのスタイライズの機能」でトレースした海岸線の角ばったところを丸くする。すると「自分の略地図」ができる。このブログにあるのは,香川氏の原図と,私がIllustratorでその原図をもとに作成した略図である。やはり地理屋は自分の世界観を教えるのが仕事なので,ある程度自分の主観が反映されている自分の略地図をもたなくてはならないと思う。
Adobe Illustrator CS3
■ 地球の公転距離